可愛い弟の為に
「どうもありがとう」

「どういたしまして」

明かりを付けて僕は桃ちゃんの顔をティッシュとタオルを使って綺麗に拭いた。

…子供だ。

この子、本当に子供だ!



「…至さんみたいな人がお父さんだったら良かったのに」

「僕は遠慮します」

思わず声に出して言ってしまった!!

あ~!!って思った時にはもう遅い。

「あ、そ」

プイッと反対を向いてしまう。

「もう!!本当にお子様だな!!」

段々イライラもピークに差し掛かってとうとう声を荒げてしまった。

桃ちゃんが目を丸くしてこちらを見ている。

「…ごめん」

僕は立ち上がってため息をついた。
こんな子に腹を立てても仕方がない。
一番辛いのはこの子だよ。
自分と年齢が近い人と結婚するならまだしも。
10歳も離れてしまって、結婚するまでに1回しか会っていないって尋常じゃない。



僕は自分に対しての嫌悪感で沈んでしまいそうだ。



「待って!!」

僕が歩き出そうとした瞬間、腰にしがみ付かれた。

「…何?」

その声が冷たく聞こえたのかもしれない。
桃ちゃんは震えている。

「置いていかないで」

「え?」

「私一人にしないで、お願い」

「…」

「私、あなたにまで立ち去られたらどうやって生きていけばいいの?
親に捨てられ、旦那にも捨てられたら」

「何言ってるの?」

「だって、ここを出て行こうとしてるでしょ?」

してないよ、全く。

「…トイレに行くの。一緒にしたいの?」



その瞬間、僕の腹に桃ちゃんの蹴りが入った。


どうやらその手癖、足癖のしつけをしないといけないらしい。
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