可愛い弟の為に
「至さんのお家はどうだったの?」

そう聞かれると僕は頭を掻いた。

「…そんなに聞きたい?」

桃ちゃんは頷いた。
時計を見ると午前4時。



…もう何も話したくないくらい、疲れているんだけどなあ。



「…僕の家はね」

仕方がない。

ゆっくりと話を始めた。



まず、父方の親戚。

本家があって、僕の従兄弟・従姉妹達の結婚などがあると品評会と称される宴があって、親戚中の晒し者になる事。

「今度の日曜日、行かないといけないよ」

結婚自体、桃ちゃんが逃げないようにという生駒家の要請があり、品評会は結婚式後、というのがだいぶ前に決まっていた。

「えー…」

桃ちゃんはガックリ項垂れた。

「まあそれはいい。どうにでもなるし、どうにでもするから」

あの親戚達は僕をあまり攻めてこない。

従兄弟・従姉妹達の中で僕が一番年上なのもある。

結婚は2番目だったけどね。

どちらかというと全てを拒否中の透はいずれターゲットにされるだろう。



それと、透。



「僕の弟はね、聞いていると思うけど桃ちゃんと同い年。
今年から大学の医学部で学んでいるよ」

「それは聞いたことがあるけど、私、一度もお話をしたことがない」

桃ちゃんが残念そうに言うので

「まあ、これから会うこともあるだろうし、また話してやってね」



でも、透は。

傷心のまま向こうに行ってるからなかなか帰って来ることもないだろう。
今日くらい実家に泊まればいいのに、飛行機で慌てて帰って行った。
ずっと向こうで住むんじゃないかと思う。
その胸にハルちゃんという幻想を抱いて。
どうして好きなもの同士なのに連絡を取り合ったりとかしないんだろうね。
親なんか適当にかわせば良いものを。
お互いを想い合うあまりに別れるなんて。
あんな空港でのシーン、見たくなかったなあ。

二人のいきさつを話すと

「…透さん、可哀想」

桃ちゃんは今度は透のことで泣いてしまった。
本当にね、もう二度と本気の恋愛なんてしないんじゃないかな。
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