可愛い弟の為に
あ~、疲れた。

窓の外を見るとすっかり夜が明けている。
結局、朝6時まで桃ちゃんに家の事情を話した。
特に透の話になると号泣していた。
自分と重なる部分があるのかもしれない。

「透さんといつかじっくりと話してみたい」

ほー、僕より透のほうが興味あるのね。

「あ、今、ちょっとヤキモチ?」

桃ちゃん、君は僕の心の中が読めるのか。
いや、それか僕が今日は顔に出しているのかも。
…普段患者さんの前なら絶対に出ないのに。
桃ちゃんを前にするとどうも狂うな、自分の感覚が。



「うん、そりゃそうだよ」

わざと言葉にしてみる。
自分の奥さんが弟のほうに興味津々だったら普通、そうでしょ。

「ふふふ」

桃ちゃんが僕に見せたことのない笑顔を見せた。

「ちょっと嬉しい」

桃ちゃんは笑いながら朝食のメニューを見る。
そんなに動いてもないのにお腹空いた、と何度も言っている。



僕も嬉しいですよ、桃ちゃん。
今は少しでも心を開いてくれたら僕はそれでいいと思う。



「今日、帰りに絶対に食材、買いに行ってね、お願い!」

本気で作る気だな。

「うん、寄ろう」



少しだけ、僕たちの間の壁が壊れた気がした。
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