可愛い弟の為に
「で、透、いったい何があったんだ?」

桃ちゃんが大慌てで作ってくれた夕食を食べ終え、僕は切り出した。

「…実は同じ班の子に付き合って欲しいと言われた」



…そう、やっぱりね。



「じゃあ付き合ったら良いじゃないですか」

桃ちゃんが口を挟む。

「…」

珍しい。透が何も言えないなんて。

「…怖い?」

僕の問いに透は上目使いでこちらを見る。

だって、その迷いは『ハルちゃん』がいるからだろ?

「…わからない。
その子の事が好きかどうかも」

透はフッと息を吐いて天を仰いだ。

「…私達、お互い好きでもないのに結婚したけど」

そう発言した桃ちゃんの真顔に思わず笑いそうになる。

「一緒にいたら、少しずつ好きになっていくかも、ですよ?
…私みたいに」



僕、桃ちゃんが一瞬、何を言っているのかわからなかった。



「…そうなんだ。
兄さんはどうなの?」



…透ー!
そんな風に本心突いて聞くの、止めてくれる?

桃ちゃんと透がニヤニヤ笑いながらこちらを見つめる。



「まあ、透を見てるような…保護者みたいな感情もあるけれど。
僕も桃ちゃんが好きだよ」



こんな風に告白するなんて…思いもしなかった。
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