可愛い弟の為に
部長以上の会議が翌日、開催された。

そこで小児科の後釜候補の資料を提示すると小児科部長の太田先生が少しだけ口元を緩めたのが見えた。

「僕はこのまま人事に掛けようと思います。
彼ら二人は小児科にとって必要不可欠です。
このまま、小児科を閉鎖するのはあまりにも忍びない」

ここに揃っている先生はほぼ賛成、という感じだったが…。

唯一、苦い顔をしているのは院長。

父さん…。

「これではこの病院が高石だらけになってしまう」

卒倒しそうになった。
そんなアホな理由、会議の場で言う?

「お言葉ですが院長。
もうそんな事を言っている時間は小児科には残されていません」



太田先生!!!



「至先生の事です。
きっと弟さんに頭を下げて必死に口説いてくださったのだと思います。
NICUも入る事が出来て、救急科専門医も資格があるなら言うことなしですよ。
若林先生の後に入るには申し分無いと思われます」



太田先生ー!ありがとうございます!

心の中で叫ぶ。



「更にもう一人、引っ張って来るって…。
一体どういう方なのか。
早くお会いしてみたいです」

太田先生の言葉で採用はほぼ決まったものだった。

「ただ、あと一人、どうにかして採用して頂きたい。
そうしなければ折角来てくださる先生方と我々が共倒れになる。
それくらい、今の小児科は辟易しています。
どうかそれだけは頭の片隅で良いので入れておいてください、院長」



太田先生、カッコ良すぎです。

父さんは何も言えなかった。
< 60 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop