可愛い弟の為に
それは決して憐みでした事ではない。

きっと彼女は友達というよりも透の大切な人なんだろうなって思ったから。

「彼女?」

と言っても透は顔を真っ赤にして違うと言った。

…可愛い。

可愛いぞ、弟よ!!

何事にも隙のない透だったからほんの少しだけ血の通った人間とわかるような事があると本当に嬉しい。

僕は【ハルちゃん】に会いに小児科病棟へ時間を見つけては通った。


ハルちゃんは透が文化祭で妹のなっちゃんの絵を描いてくれたことを嬉しそうに話してくれた。

案外、この子も透の事が好きなんじゃないかと思う事が多々あった。



「透とは同じクラス?」

「はい」

「学校ではどんな感じ?」

「周りがにぎやかに話していたらニコニコ笑って聞いていますよ。
でも…。どことなく冷めているのか、一人で過ごすことも多いです」



やっぱり、と思う。
アイツの根本はそこなんだよな。
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