可愛い弟の為に
それからしばらくして、一度透とじっくり話してみたいと思い、僕は透の部屋をノックした。
「はい」
その声が聞こえて僕は透の部屋に入る。
机の上には数学の問題集。
透はひたすら自力で勉強していた。
中々出来る事ではない。
「大学、どこ受けるか決めた?」
「…まだ」
透の顔が明らかに【ウザい】と言っていた。
両親からも色々と言われているに違いない。
「透は何をしたいの?」
「えっ…?」
僕はベッドに腰掛けた。
「普通に会社で働きたい?それともデパートなどの店頭に立って接客?教師も出来るだろうし…」
透なら何でもこなす、と僕は思っている。
何をしてもそれなりに出来てしまうのだ。
逆に器用貧乏になる可能性もある。
「自分の好きな事をしなよ。人生1回きりだし」
透を押さえつけても逆効果だ。
このタイプは自由に羽ばたかせた方がいい。
透は俯いて呟く。
「漫画家」
一瞬、呆然としてしまった。
- マンガカ… -
ああ!!そうか!!
「漫画家かあ!透、絵が上手だもんね!」
僕は透の本心が聞けて嬉しくてニコニコしてしまった。
「兄さんはどうして医者になろうと思ったの?」
今度は透からの質問。
ほほう、そうくるか。
「最初は父さんの言いなりで中学から高校、大学に進んだよ。
まあ父さんの言うことを聞いてそれなりに結果を出したら良いかなって」
僕はベッドに寝転んだ。
「医学部で勉強して、色んな人に出会って、父親より尊敬出来る考え方の先生に出会って、今の僕がいる
。最初は親の敷いたレールに乗ったけど、今の僕は自分の意志で医者をしているよ。
一人でも多くの患者さんの命と健康と心を守りたい。
色々と経験をしたから余計にそう思う」
透はマジマジと僕の顔を見ていた。
何、何でそんなに見るの?
「最初は嫌じゃなかった?」
自由人・透が聞くのは当然だろう。
「何が嫌か、よくわからなかった。
透みたいに反発する気も最初からなかったし。
ほとんどの人ってそうじゃないのかなあ。
どう生きていっていいのかわからないから目の前にある環境にしがみついてさ。
必死に足掻いて流れに食らいついている。
だから透みたいな人間には自由に生きてもらいたいと思う。
透は中学受験も嫌がって受けず、高校も敢えてランクを何段階も落として、何がやりたいのかこっちから見たらさっぱりだけど、それだけ自分の意志を通すなら一体透はどこへ行くのか、僕は見てみたいよ」
本音だ。
透が今後、どんな変化をしていくのかこの目でしっかりと見たい。
「…いやあ、そんな風に言われる事じゃないけど」
「あの親からそこまで逃げるのは凄いと思うよ」
僕は思わず笑った。
毒牙のかかったアレから逃げられるのは透しかいない。
…いや、親だけじゃないけどね、僕たちの周りの敵は。
「なんというか納得出来ないだけで…」
「充分な理由だよ。何となくでも自分が納得出来ないものを受け入れる必要はない」
透は
- 兄さん、そんなこと言って、大丈夫? -
と心の中で言っているような顔をしている。
「透は僕よりも色んな可能性を持ってる。陰ながら応援してるよ」
そう言って立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。
そろそろ会話を止めよう。
普段出入りしない透の部屋から中々出てこないのを察知されたらあの母さん、部屋に入ってくるだろうし。
「あ!」
クルリ、と透の方に向いて
「淡路さんとその後、どうなったのか、兄として気にしているのでまた結果を教えてね」
透の瞬間湯沸し器のような赤くなる顔。
もう、本当に可愛いよ、透は。
僕は笑いながら部屋を出た。
「はい」
その声が聞こえて僕は透の部屋に入る。
机の上には数学の問題集。
透はひたすら自力で勉強していた。
中々出来る事ではない。
「大学、どこ受けるか決めた?」
「…まだ」
透の顔が明らかに【ウザい】と言っていた。
両親からも色々と言われているに違いない。
「透は何をしたいの?」
「えっ…?」
僕はベッドに腰掛けた。
「普通に会社で働きたい?それともデパートなどの店頭に立って接客?教師も出来るだろうし…」
透なら何でもこなす、と僕は思っている。
何をしてもそれなりに出来てしまうのだ。
逆に器用貧乏になる可能性もある。
「自分の好きな事をしなよ。人生1回きりだし」
透を押さえつけても逆効果だ。
このタイプは自由に羽ばたかせた方がいい。
透は俯いて呟く。
「漫画家」
一瞬、呆然としてしまった。
- マンガカ… -
ああ!!そうか!!
「漫画家かあ!透、絵が上手だもんね!」
僕は透の本心が聞けて嬉しくてニコニコしてしまった。
「兄さんはどうして医者になろうと思ったの?」
今度は透からの質問。
ほほう、そうくるか。
「最初は父さんの言いなりで中学から高校、大学に進んだよ。
まあ父さんの言うことを聞いてそれなりに結果を出したら良いかなって」
僕はベッドに寝転んだ。
「医学部で勉強して、色んな人に出会って、父親より尊敬出来る考え方の先生に出会って、今の僕がいる
。最初は親の敷いたレールに乗ったけど、今の僕は自分の意志で医者をしているよ。
一人でも多くの患者さんの命と健康と心を守りたい。
色々と経験をしたから余計にそう思う」
透はマジマジと僕の顔を見ていた。
何、何でそんなに見るの?
「最初は嫌じゃなかった?」
自由人・透が聞くのは当然だろう。
「何が嫌か、よくわからなかった。
透みたいに反発する気も最初からなかったし。
ほとんどの人ってそうじゃないのかなあ。
どう生きていっていいのかわからないから目の前にある環境にしがみついてさ。
必死に足掻いて流れに食らいついている。
だから透みたいな人間には自由に生きてもらいたいと思う。
透は中学受験も嫌がって受けず、高校も敢えてランクを何段階も落として、何がやりたいのかこっちから見たらさっぱりだけど、それだけ自分の意志を通すなら一体透はどこへ行くのか、僕は見てみたいよ」
本音だ。
透が今後、どんな変化をしていくのかこの目でしっかりと見たい。
「…いやあ、そんな風に言われる事じゃないけど」
「あの親からそこまで逃げるのは凄いと思うよ」
僕は思わず笑った。
毒牙のかかったアレから逃げられるのは透しかいない。
…いや、親だけじゃないけどね、僕たちの周りの敵は。
「なんというか納得出来ないだけで…」
「充分な理由だよ。何となくでも自分が納得出来ないものを受け入れる必要はない」
透は
- 兄さん、そんなこと言って、大丈夫? -
と心の中で言っているような顔をしている。
「透は僕よりも色んな可能性を持ってる。陰ながら応援してるよ」
そう言って立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。
そろそろ会話を止めよう。
普段出入りしない透の部屋から中々出てこないのを察知されたらあの母さん、部屋に入ってくるだろうし。
「あ!」
クルリ、と透の方に向いて
「淡路さんとその後、どうなったのか、兄として気にしているのでまた結果を教えてね」
透の瞬間湯沸し器のような赤くなる顔。
もう、本当に可愛いよ、透は。
僕は笑いながら部屋を出た。