可愛い弟の為に
翌朝はいいお天気で。
実家になど行かずに桃ちゃんとドライブに出かけたい気分だ。

「さあさあ!
至さん、行こう!!」

桃ちゃん、あなた何か楽しんでいませんか?

「はいはい、では宜しくお願いします」

僕と桃ちゃんは車で実家に向かう。



「一体、何の用なんだ」

開口一番、毎回コレ。
来たら悪いのか。
自分が生まれ育った家へ。

「父さん、今日は透の事でお話に上がりました」

出来るだけ冷静に装う。

「…」

ほーら!
透の情報は欲しいだろう。
病院内で溢れ返っている噂の数々は秘書からでも聞いているだろう。

「至、透に何かあったの?」

母さんは4人分のお茶を運んできた。

「二人に聞いて欲しい、透の事。
これは今後の、高石家に関わる大切な話だと思うから」

母さんも座った。
静まり返るリビング。

僕は伏せていた目を上げる。
両親は少し緊張した面持ちでこちらを見ている。

「透に今、付き合っている人がいるのは父さん、本人から言われたよね」

目の前で見たが、再度強調。
父さんは頷いた。

「至の患者…?」

秘書にでも聞いたか。

「そう、肺炎で入院してた」

母さんの顔色が変わった。

「…透は患者に手を出したの?」

人聞きが悪い。
僕はテーブルをコツン、と拳で叩いた。

「…彼女、透の同級生だよ」

チラッと母さんを見る。

何となく、それが誰か…わかってきたかな。

「偶然、救急で運ばれて来たんだ。
僕と透が当直で入っていた時にね」

僕は一呼吸置いて両親、特に母さんを睨んだ。

「高校の時の彼女だよ、覚えてるだろ?母さん」
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