可愛い弟の為に
「…お前に頭を下げられても、透がこの家に来ない限りは進展しない」

父さんはため息混じりに言った。

確かにそうだ。
けれど…。

母さんはそうではない。

自分のした事を暴露されて立腹しているようだ。



そんな母さんを見て、もう一度、釘を刺してやろうと思う。

「あと1ヶ月…あと1ヶ月もすればそんな悠長な事も言ってられないと思います」

「…何が言いたい」

「…あなた方が心底望んでいるものが透と彼女の間に出来たらどうしますか?」

冷ややかな目を両親に向けた。

母さんの顔色がその瞬間、変わった。

「…そんな事、許しません。
それに、そんなに早く出来るなんて」

「あり得ますよ、現に透がそう言ってました」

「ちょっと待て」

父さんが会話に入ってきた。

「確か、その子が入院してきたのは3月…」

「下旬です」

僕はにこやかに答えた。

「で、今日は…?」

「4月10日です」

「再会してまだ2週間ちょっとだぞ?」



それがどうしたって言うんだ、父さん。
二人は…



「約20年の空白の年月を一気に埋めているのですよ。
その辺りの行動も父さん、母さん、何故透がそうするのか、今までの自分達の行動を振り返って頂きたい。
あの二人の事は誰も責められないし誰も止める事が出来ないんだ」
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