可愛い弟の為に
「あの〜」

桃ちゃんが僕達を見つめて手を挙げた。

「真剣なお話に水を差すかもしれませんが、私はハルちゃんしか妹になって欲しくありません。
透さんの感情を抑制出来るのもハルちゃんだけだし、結婚を許してお義父さんお義母さんがハルちゃんと仲良くなれば透さんの心も自然に戻ってきますよ」



桃ちゃん、やるねえ!!
危うく堂々巡りになりそうな雰囲気を見事にぶち壊してくれた!!



「…出来ないわよ」

母さんが呟く。
一体何なの?

「お義母さん、何が出来ないのですか?」

桃ちゃんが攻める。

「今更、どの面を下げて会えば良いの?」

ほほう、会う気になったか。

「それはお義母さん」

桃ちゃんはニッコリと笑って

「この家に来たら普通に『いらっしゃい』と笑えばいいのです」

「…まあ、透がちゃんと話をしてくれたら、別に俺は今更反対しない」

父さんはそう言って俯いたかと思ったら急に僕を見て叫ぶ。

「但し!!それは子供が出来ていなかったら、の話だ!!」

父さん、僕をそんなに睨まなくても…。

「子供が先に出来ていたら別!!その時は説教してやるわ~!!!」

と言いつつ、父さん、口元が緩んでいますよ。
文句言いつつも万が一孫が出来たら、病院辞めて孫の世話をしそうだな、これは。

「ではお義父さん、お義母さん、透さんとハルちゃんが来たらちゃんと迎えてあげてくださいね。
…じゃないと、私、一生恨みますよ。
万が一、破談になるようだったら、私、この家から去ります。
至さんが病院を継ぐ話もナシです」

桃ちゃんは鬼のような鋭い視線を両親に投げかけた。



…怖い。
< 85 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop