可愛い弟の為に
「…かったの」

「はい?」

透がモゴモゴ言うので聞き取れなかった。
透の顔が段々真っ赤になる。

「誰にも取られたくなかったの!ハルを」

僕は思わず手を叩いた。
透、ますます顔が赤くなる。



…透~!!可愛いところ、あるじゃないか!!
はっきりと言うね~
ただ、僕に言うんじゃなくてハルちゃんに言えよ。



「お前にもそういう感情があるんだ!
じゃあ、僕からあと一つ、言っておこう」

僕は透の肩を掴む。

「ちゃんとプロポーズしろよ」

出会ってから、ずっとハルちゃんは待ってるぞ。
お前の言葉を。

「…わかってるよ。昨日、色々と準備が整ったから。
本当は今週中にはきっちりするつもりだったんだ。
思っていたよりもちょっと早くなっただけ」

透の目が鋭くなった。



いよいよ、本気になったか。
僕はこの瞬間を誰よりも待ち望んでいたのかもしれない。
透が自分の手で、ハルちゃんを受け止める時を。

ようやく空港の、あの重苦しい呪縛から解き放たれる時が来たな。
お前も、ハルちゃんも。

それを目撃していた僕も。
< 90 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop