可愛い弟の為に
あの二人と過ごした時間が良すぎて…。

僕は目の前に広がる高石本家を見てうんざりする。



「至、今日は賑やかな嫁はいないのか」



口を開けばこれか。
父さんの一番上の兄、武伯父さん。
ここの娘、琥珀は僕より1歳年下。
イトコの中では一番話がしやすい。
今は嫁いで離れた所に住んでいるが。



「今日は別行動です」

僕はため息混じりに言った。

「お前がわざわざ来るという事は何かあるんだろうな」



高圧的だなあ…
これが大学名誉教授だからなあ…
大学も人選間違えている。



「透が近々結婚します」

しばらく、静寂に包まれた。

「透…が、か」

「はい」

また、静寂。



「まあ透の事だからあまり期待していない」



…この人に何故、透がそう言われないといけないんだ。



「期待しなくて結構です。
…ただ、僕の妻みたいに心臓に毛がはえている女性ではありませんのでお手柔らかに」

「つまらんなあ…
そんな平凡な嫁なのか」

「…平凡のどこが悪いのです。
透の留守をしっかり守って貰わないといけませんしね」

「ではお前の嫁は異常だな」



…羽交い締めにしてやろうか。



「異常とでも何とでも。
また、妻にヤられますよ」

不妊問題の時に一番キレたのは実は桃ちゃん。
この武伯父さんに一言も反撃させなかった。

「…まあほどほどにしておくわ」



そうしろ。



「…また近々お会いするかと思いますが、その時、おわかりですよね。
何かあれば僕は遠慮なく口を挟みますから」
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