東の国 妖合戦
顔、上半身、膝までは普通の人間の娘なのだが、長い髪は先に行くほど枝となり、葉が茂り、蔓が延びている。

膝より下も、木の幹となり、根が張り、足の甲に当たる部分には菌糸類(キノコなど)が生育している。

が、僅かずつならば移動も可能なのか。

娘はゆっくりと歩みの速度で前に出る。

「西の長、神野 悪五郎様とお見受け致します」

「そこまで知ってこの狼藉か。山ン本の刺客だな」

何者をも射殺す視線の悪五郎の背後で、泪は隠れてプルプル震えている。

「東の国・関所守護頭の樹妖(じゅよう)、樹(いつき)と申します」

丁寧に一礼する樹。

「不躾ながら神野様、つきましては一つお願いがございます」

「……」

無言で先を促す悪五郎に。

「後生ですから死んで下さいませ!」

樹はカッと目を見開いた!

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