不条理カウントダウン
彼のトイレの介助をしたぼくも、ノロウイルスに感染した。
彼のお通夜にもお葬式にも出ることができず、ついでに風邪までひいてしまって、
仕事に復帰できたのは、彼を亡くした十日後だった。
「おにいちゃん、仕事、続けられるの?」
久方ぶりに朝綺のマンションへ向かうぼくに、玄関先の麗は、怒ったような顔で言った。
ぼくが伏せっている間に、麗は家出してぼくの部屋にやって来た。
広いだけが取り柄の古びたアパートに麗が居着くようになったのは、このときからだ。
「仕事は続けるよ。どうしてそんなこと言うんだ?」
「うなされてた。ごめんなさいって繰り返してた」