不条理カウントダウン
・III


 朝綺は高校卒業以降、一人暮らしをしている。


実家はさほど遠くない場所にあるけれど、ご両親と顔を合わせることはほとんどないらしい。


昔から折り合いが悪かったんだ、と朝綺は言う。


一緒に住んでいたころは口論が絶えなかったそうだ。



 口論の原因を訊いてみた。


朝綺がまだ、どうにかしてつかまり立ちができたころだ。


朝綺は、キャスター付きの椅子にドサリと腰を下ろして、肩をすくめた。



「歩かせたがるんだよ、うちの親。訓練すりゃ予後が延びるとでも思ってんじゃねぇの? そんなわけないのにさ。


おれとしては、筋肉を傷めたら復活しないんだから、あんまり無茶したくないんだよね」


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