不条理カウントダウン
朝綺は決まって、ぼくが来てすぐにトイレに行きたがる。
母親に近いくらいの世代とはいえ、女性のヘルパーさんには、トイレや入浴の介助を頼みづらいらしい。
「おれだって、若い男の子なの。女性の前では格好つけたいんだよ。イメージってもんがあるだろ? おれ、こんなイケメンだしさ」
確かに朝綺は秀麗な顔立ちをしていて、ぼくなんかより、よほどお洒落だ。
髪型にも服装にもこだわるし、髭の剃り残しなんて言語道断で、
出掛けるたびに写真を撮りたがっては、気に入る写りになるまで何度でもやり直す。
筋ジストロフィーの症状で、衰えた筋肉の代わりに脂肪が付く「仮性肥大」を本気で嫌っていて、食事内容を気にしている。
マッサージで脂肪がどうにかならないか、と相談されたこともある。