不条理カウントダウン
「おれが普通の体なら、応援してくれた?」
「ああ。もちろん応援した」
「その答えで十分だよ。ありがとう」
朝綺は今、嘘をついた。
十分なはずがない。
朝綺と出会って麗が変わったように、麗と出会った朝綺もまた、変わった。
ときおり苦しそうな目をして嘘をつくようになった。
筋ジストロフィーを患う自分の運命を、かつて朝綺は受け入れていた。
若くして訪れる死について、達観して醒めたことを語っていた。
それが変わったんだ。
今の朝綺は、運命に怯【おび】えている。
死に抗【あらが】おうとしている。