不条理カウントダウン
「特効薬の臨床試験、早く始まればいいのにね」
ぼくは思わず言ってしまって、無神経だっただろうかと、口をつぐんだ。
朝綺が、今度はハッキリと笑った。
「ほんとだよ。
倫理問題がどうこうとか、うるさいこと言わねぇから、さっさとおれの体で薬の効きを試してくれ、って感じ。
やっぱり長生きしてみたい。
あー、でも、これ症状軽くなったら、補助金減るよな。おれ、どうやって生計立てよう?」
「SF小説の出版、考えてみたら? おもしろいよ、朝綺の小説。
死んでからじゃなくて、生きてるうちに公表しなよ」
「ええっ、どうするかなぁ?」
悩むようなことを言いながら、朝綺は目を輝かせている。
書きたいものも、やりたいことも、朝綺には、本当はたくさんあるんだ。