不条理カウントダウン
・IV
ぼくが夕食を作っている間に、麗は起き出して、再び朝綺の椅子の足下で数学の問題を解き始めた。
麗と朝綺が笑い合う声が聞こえる。
何某かの公式の形がとても美しいらしいのだけれど、ぼくには意味がわからない。
筑前煮にクッキングシートの落し蓋をして、ぐつぐつと音を立てて煮える様子を、ぼんやりと見つめる。
藤原さん、ぼくの煮物を気に入ってくれていたな。
そんなことを思っていたら、ポケットのスマホがメールの受信を知らせた。
事務所からの連絡だけはバイブレーションのパターンを変えているから、すぐにわかる。