不条理カウントダウン
当時十五歳だった朝綺は、今では二十一歳だ。
進行性の病気を患【わずら】っている。
かつては自力で車椅子を転がしていたのが、今では電動車椅子を使っている。
身の回りのことも、ほとんどの場面で介助が必要になった。
朝綺と親しくなったことがぼくをヘルパーの道に進ませたと言っていい。
朝綺はおもしろい男だ。
よくしゃべるし、とても賢い。
テンキーで操作するパソコンを起ち上げれば、朝綺の精神と思考は自由に駆け回る。
毎日、通信制大学の課題なんかあっという間にやっつけて、
ティーンエイジャー向けのSF小説を書いては、ぼくに見せてくれる。
おれが死んだら公表して、と、けろりとして笑いながら。