不条理カウントダウン
麗が顔を上げた。
「晩ごはん、いらない。あたしも行くから。朝綺のところ」
ぼくは中指で眼鏡のブリッジを押し上げた。
そのまま手を下ろせないのは、どんな顔をすればいいかわからないからだ。
「麗、ぼくは仕事なんだよ。
麗を朝綺に会わせたことがある、って事務所のほうにも言ってあるけど、
こんなにしょっちゅう麗を朝綺の家に連れて行ってるなんて知れたら……」
「おにいちゃんには関係ないの。あたしは、彼氏の家に行くだけ。
食事介助も、介助じゃなくて、ただ一緒にごはん食べてるだけで、そんなの、付き合ってたら普通でしょ?」
ぼくは息を呑んだ。
二の句が継げない。