48歳のお嬢様
献身的執事
「雪恵お嬢様。
本日は午前9時30分より理事会がございますので、
朝の幼稚舎視察は致しません。
貴女はまた…そのようなラフな服装で…。
本日のお召し物はスーツをご用意したはずですが…。
お召しかえをお急ぎください」
「えー……外遊びは?らんらん体操は?
みんな『雪恵ちゃん』と遊ぶの、楽しみにしてくれているのに…。
私、会議欠席するわ。
和樹の方がよっぽど理事長らしいもの、代わりにお願い」
「理事長がご出席なさらなければ理事会が延期になるだけでございます。
先延ばしにすると後日、理事の方々に今日の理由を用意しなければなりません」
「……分かったわよ。
あの人達にイヤミを言われるのは嫌だわ。
出席します。すればいいのよね、すれば。
運動不足で早く老け込んで、病気になってクタバレばいいのよね私」
「お嬢様!お言葉が下品でございます。
貴女にはいつまでも健やかで若々しくお過ごし頂かなければなりません。
ご冗談でもその様なことは口になさいません様に」
北條路 雪恵(ほうじょうじ ゆきえ)48歳。
華族の末裔、北條路家当主。
北條路学園の理事長をしている。
25歳の時、飛行機事故で両親を亡くし、本家の一人娘だった私が父のあとを継いだ。
その際、通いの家政婦さんを二人だけにして、住み込みの人を雇うのはやめた。
それ以来23年、嫁にも行かず婿もとらずに、執事の和樹と一緒にこの無駄に大きな屋敷に住んでいる。
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