48歳のお嬢様
「絶対にお嬢様はご参加なさっていると思いました。
音楽室、各実験室、調理室、美術室、武道館、体育館…。
お嬢様の行き先はいつもそういう実技系でございます」
「ふふ…。和樹は私のことをよく解ってくれているわ。
だって、そういう授業は観ていて面白いんだもの」
「しつこいようですが、再度。
授業の視察ではご参加なさいません様、お願い申し上げます」
「はい。ごめんなさいね、和樹」
「お嬢様、ダンスでしたら屋敷のスタジオの方が。
一人でつまらないとおっしゃるのでしたら、
いつでも私がお相手致します」
「そう…ね。
授業に参加するのは何故か先生のご迷惑になる様ね。
何故さっき先生は私に謝ったのかしら…」
「たぶん、お嬢様の思うような『楽しい授業』が実践されていない、ということが解って、反省なさっていたのだと思います。
でも授業ですから、カリキュラムもございますし、いつも自由に…という訳には参りません」
「そう……。
また私は勝手で我がままな行動をとってしまったのね」
「『勝手で我まま』というより『自由奔放』の方がお嬢様にはしっくり致します」
「物は言いようね。
和樹は叱るときでも優しいわ。ありがとう。なるべく気を付けるわね」
「お嬢様は素直で聡明な女性ですから……声を荒げて叱る事など、そう必要ございません」
和樹はいつもこうやって私にひたすら優しいのだった……。