尽くしたいと思うのは、
「お、終わった……!」
あのあと作業を遅くまでして、次の日の朝からお昼休憩を挟んでかれこれ3時間。定時の1時間前に、ようやくデータの打ちこみが終わった。
ふたりがかりでやって、本当によかった。毎日こなさないといけない仕事の方もなんとかある程度は目処がついているし、今日は定時を少し過ぎたくらいに帰れると思う。
「お疲れさまー」
「本当にありがとうございました……!」
「いえいえ。間に合ってよかったね」
昨日の夜に保存したはずのデータがなぜか朝に迷子になっていた時はどうしようかと思ったけど、すぐに見つかったし。なにより間に合ったし。
終わりよければ全てよし、だよね。
「くるみさんのおかげです!
明日のランチとか、またお礼させて下さい!」
「え⁉︎ いいよいいよ!」
ぎょっと目を見開いて手をぶんぶんと横に振る。
奢ることはできても、奢られるのなんて性に合わない。しかも可愛い後輩にお金を払わすなんて、わたしには無理だ。
「わたしお弁当派だから、本当に大丈夫だよ」
気にしないで、と首をわずかに傾げると、それなら、と明衣ちゃんは勢いよく席を立つ。
「せめて飲みもの! 買ってきます!」
「えええ?」
わたしが困惑した声をあげている隙に、彼女はその場から飛び出して行ってしまった。
さ、先にデータを受け取って欲しかったな……。
仕方がない、とわたしが手伝った分のデータを明衣ちゃんに回す用意をする。
首を動かし、ぱきっと音がしたところで、────ころん。空からキャンディーがいくつか降ってくる。
慌てて振り返ると、そこには黙って立ち去る加地さんの背中があった。
「あ、ありがとうございますっ」
追いかけるようになんとか言葉を投げかけると、ひらひらと手を振られた。