尽くしたいと思うのは、
◇欠点は美点
乾杯の挨拶が済み、カシスウーロンで喉を潤していく。じわじわと汗がにじむような暑さの中、1日働いたあとはお酒がおいしい。
とはいえそんなにお酒に強い方じゃないから一気に飲みすぎないように気をつける。
今日は、わたしの代わりにいつも適当に断ってくれる真由がいないから、勧められるままに飲まないように気をつけないと。
ちなみに真由だけじゃなく、実は浅田さんもいない。営業先の人に誘われて断れず、急遽不参加になったんだとか。
飲み会というか、ただ帰りに飲むのとほとんど変わらない……人数が多いという感覚の飲みだしね。こっちを優先するわけにもいかなかったんだろう。
今日予約してくれていたのは仕切りのある座敷の店。飲み放題のお酒の種類が豊富なところで、料理やデザートが美味しいから女性も楽しめるようになっている。
さすが佐野さん、いい店を知っているなぁ。
そんなふうにぼんやりと考えながら、わたしはおつまみを取り分けては周りの人に回していて。
「お、ありがとう」
「水瀬さんは今日も尽くしてくるねー」
「……あはは」
引きつった表情で笑い声をあげる。わたしの気まずさを知らずにみなさんすでに楽しそうで。
〝尽くしてる〟ってそれ、わたしには禁句なんですよー。お忘れですかー。
「くるみさん、そういうのは私がしますので」
「えっと、うん。ありがとう」
隣に座っている明衣ちゃんにとめられて、腰をゆっくりとおろす。
ふと視線を感じて入り口付近に目をやると、冷たい瞳をした佐野さんと目があった。その様子につい鼻白むと、ふい、と顔をそらされる。
……やっぱり、気のせいじゃないよね。
いつからかはわからないけど、佐野さんの態度はわたしに対してだけみんなと違う。
ふとした瞬間に睨まれていたり、眉間にしわを寄せられていたり。さっき飲み会費を幹事の彼女に支払った時も、対応はすげなかった。
勘違いかなぁと思っていたんだけど、そんなふうに考えられないくらい明らかなものになってきた。
「くるみさん? どうかしました?」
「……ううん、なんでもないよ」
気にしても意味ないよね。少なくとも今、後輩に気を遣わせるようなことではない。
「よーし、明衣ちゃん! 今日は飲もうね!」
「? はいっ」