尽くしたいと思うのは、
そんなふうに言われることは、いつものことで。今までに散々「重い」と言われてきたわたしには、慣れた評価だ。
言い方はひどいけど、みんなに悪意はないことをわかっている。
本当にそう思ったんだよね。思ってしまったんだよね。そして、今はやらかしたなぁって、自分たちの言葉を思い返して言いすぎたと焦ってるんでしょう。
そのことがわかるから、別にいいの。
「みんなひどいですよー」
1歩踏み出して、へにゃりと笑う。本人がいないところで容赦ないです! なんて言いながら冗談にしてしまえば、みんなほっと息を吐き出して、とめていた動きを再開する。
「悪い悪い」
「まったく!」
────ああ、どうか。涙も、苦しさも、滲まないで。
わたしはこの会社の人たちを困らせたくなんてないの。わたしの傷になんて、気づかないまま。
だけど、……だけどそれでも、平気なわけじゃない。
みんなのことが好きだから、切ない。
恋人じゃないけど大切な人たちにそんなふうに思われているんだと。思われてしまうようなことをわたしはしているんだと実感してしまうから。
反論もできず、だけどわたしに悪いと思い、眉をさげて困っていた明衣ちゃん。そんな彼女の隣、さっきまでわたしが座っていた席へと足を進める。
だけど笑いながら、泣きそうになっていると、
「水瀬ちゃんの尽くすところは、美点だよ」
そう言った加地さんに腕を掴まれた。
え? と見上げると、仕事中みたいに……ううん、それよりずっと真剣な表情。強い瞳が冷静にみんなを見つめていて。
かと思いきや、身振り手振りをつけて表情豊かに語り出す。
「確かに水瀬ちゃんはやりすぎだし、愛が重いし、だめ男生産機だし、もうどうしようもないよ。はたから見てて頭が痛くなるの、よくわかる」
「いや俺たちそこまで言ってな、」
「でも」
あんまりのことに呆然としていると、男性社員の声を遮り、
「不器用なくらいにまっすぐだよね」
楽しげに笑ったその端正な顔は、柔らかく綻んでいた。