尽くしたいと思うのは、
◇感情は未定
作業室で、ぽつぽつと指先で文字を打ちこむ。変換、決定までしたら確認ののち印刷ボタン。片手で持てるほど小さな機械────テプラから出てきた、ラミネートラベルを机に置き、また同じ作業を繰り返す。
単純なこれは、ファイルの整理に使用するもの。今まさに新たなファイルを作っているから大量生産中なんだ。
数日前に8月に入り夏が本格化した今、うちの雑貨の商品の売れ筋は涼しげなガラス食器なんかの日用雑貨。今年から手を出したメンソールが配合された入浴剤や日傘などの日よけグッズも人気だ。
商品の入れ替わりは完全に済み、6月に売れに売れたレイングッズはそこまでじゃなくなった。なので先月まではかろうじて使っていたパンフレットや資料はしまいこむことに。
そのために急遽ファイルを作っているんだ。
「んーっ」
一緒に作業をしていた真由が資料を机にばさりと置いて、息をもらす。ぐんっと背をそり、脱力した。
「仕分け終わったわよ」
「お疲れさまー。思ったよりはやく済んだね」
「でもさすがに疲れたわ」
それは確かに。いくらスピードがはやくても、紙は重いし目は疲れる。なにより量が多いんだもの。ようやく一息つくことができてほっとした。
「この量だし、ファイリングは明日にしよっか」
「そうね。じゃあ破棄する分だけ捨てたら今日は帰りましょう」
うん、と応えながら背中がそわそわとする。本当なら真由に話があったんだけど、内容が内容なだけに、なかなか誘うことが難しい。
今日もまた切り出せないまま、解散かなぁ。
ため息を吐き出しながら、テプラを片づけていると、
「ちょっと、ちんたらしないの。
さっさと片づけて出るわよ」
「え?」
「なに、このあと用でもあるって言うの?」
予想もしていなかった言葉にふるふると首を横に振る。パンフレットとファイルを棚にしまった彼女が眉をあげて小さく笑う。
「久しぶりにふたりで飲みに行きましょ」
嬉しいお誘いにわたしは、ぱぁっと満面の笑みを浮かべ、こくこくと頷いた。