尽くしたいと思うのは、
何回傷ついたって、わたしはわたしのままだった。尽くしてばかりのわたしだった。
よくないことだとわかっていても、愛し方は、存在は、変わらない。変えられないんだ。
だって……願っているの。
だめなわたしを、このまま受け入れて誰かが愛してくれることを。
加地さんにそうなって欲しいわけじゃないし、なってくれるとも思えない。だから彼ひとりに望んでいるわけではない。
さすがのわたしも急にそこまで重くならないしね。
それでも、いつか、と思うのなら変わったりなんてできない。
わたしを想って欲しければ、わたしはわたしのままでいなくちゃ。そうじゃなかったら絶対にそんな未来はこないから。
とてもわがままで夢見がちなことだけど。それでも、わたしは信じていたいんだ。
「痛い目にあっても、いいの」
もう、そんなことで抑えられるとは思えないから。
はやる気持ち。弾む鼓動。胸いっぱいの甘い幸せ。これは全部、加地さんへの想いがそうさせる。
たとえあとで苦しい想いをしたって、今のときめきが嘘になるわけじゃないもの。
「ただ、加地さんを見ていたい。
今まで目をそらしてばかりいた彼を、知りたい」
いくつもの恋愛をしてきたはずなのに、ちっともうまくならない。自分で自分の感情もわからない。
だけど今、このまま答えが出るまでは、大切にしたっていいはずだ。
「泣いたって知らないわよ」
「うん」
「なら、勝手にしなさい」
ふい、と顔をそらした真由がグラスを口に運ぶ。深い赤色の液体が揺れた。
わたしがこくりと頷くと、彼女は不機嫌そうに口元を引き締めた。
「なにかあったらちゃんと相談して。
ひとりで泣いたら許さないから」
……ああ、もう。あれこれと言いつつ、真由はやっぱり優しい。泣いたって知らないと言いながらひとりで泣くことがないようにしてくれるんだ。
思わず涙が滲みそうになるのをこらえて、そっと口元を緩ませた。
「うん」
ねぇ、加地さん。わたしね、少し悔しいんですが、できることなら今のわたしの気持ちが恋であればいいと。
他でもないあなたに、恋だと名づけて欲しいと、そう思っているんです。