尽くしたいと思うのは、




「は、はいっ」

「まだかかりそうなの? 帰らなくて大丈夫?」



あまりにもわたしがパソコンに向かってばかりいて、そのうえこの時間になってもコピー機を使っていたからだろう。加地さんは心配してくれたみたいだ。

その気遣いが嬉しくて、胸のあたりはふんわりと優しいもので包まれたような感覚になる。



「大丈夫です、もうすぐ終わります」



席を立ち、少数の紙の束を手に戻る。束ねる枚数は大したことないし、言葉どおりもうすぐ終わるはずだ。



「水瀬ちゃんは頑張りすぎて、本当に重たいからなぁ」

「うっ……」



夜遅くまでなんとか頑張ってるというのに、なんという追い打ち。めげて仕事が手につかなくなったらどうする気なんでしょうか。

まぁ、そんなことを考えつつもどうせわたしは毎日働き続けるんだろう。放棄する勇気なんてないし。



ひとりで百面相をしているわたしを見て、加地さんがかすかに口元を緩ませる。だけどすぐに真一文字に引き締められ、眩しそうに目を細めた。



「……自分を見てるようで、不安になるよ」



ぽつり、とその場に言葉がおとされる。この〝不安になる〟とは、わたしを指しているに違いない。

加地さんとわたしはちっとも似ていないのに、自分を見てるようだなんて。その言葉が不思議で、ふふっと笑い声がもれた。



「なに言ってるんですか。
加地さんはわたしと違って重くないのに」



仕事もできるし、かっこいいし。女性は尽きず、彼を想う人はわたしが知らないだけで数多くいるはず。

ましてや、だめ男生産機もといだめ女生産機と呼ばれるなんてありえないだろう。






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