尽くしたいと思うのは、




「だから気をつけなさいって言ったでしょう?
あんたはもう少し見る目を養いなさい」



真由がおちてきた髪を耳にかけながら、呆れたように息をもらす。その様子にわたしは眉をさげ、さらに落ちこんでしまう。



「だって、賢治なら大丈夫だと思ったの」



わたしよりひとつ年下の彼・大塚 賢治(おおつか けんじ)は、能天気なウェブデザイナー。そんなに適当な仕事っぷりで大丈夫なのかと心配になることもあったけど、なんだかんだでうまくやってしまう。

彼といると、わたしも自然と肩の力を抜くことができた。

わたしのことを重いと言わず、受け入れてくれたから。年下とは思えない包容力だ、なんてわたしは安心していたんだ。



だけど、重いと捉えなかったのは、彼が真剣にわたしと向き合っていなかったから。



『うわー! ばれたー!』



別れる前でさえ、そんなテンション。いつもどおりの調子。

とても軽くて、彼らしくて、それが悲しかった。



わたしはまた、人をうまく愛せなかったんだ。



思わず箸を置いてしまう。その様子を見ていた真由が仕方がないなぁとでも言うように曖昧な表情を浮かべる。



「まぁ、あんたに尽くしぐせがあるのは仕方がないわよね」

「……」

「元気出しなさい」



うん、と震えた声をもらす。

自分にも他人にも厳しい彼女は、どれだけ口調が冷たくとも、本当はとても情にあつい。だから、わたしは真由のことが好きなんだ。



「わたし真由みたいな人と付き合いたい……」

「私は彼氏いるし、あんたみたいな子はごめんだけどね」

「ふられた……!」



真由には学生時代からの恋人がいる。しかもその彼は自分を理解して受け止めてくれるっていうんだから、ずるいよね。

真由のことを大切にしてくれる人がいるのは嬉しいけど、さみしいし正直羨ましい。



「愛したいし愛されたい……」

「懲りてないわね?」




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