尽くしたいと思うのは、
「あの、加地さん、質問いいですか?」
「ん? なに?」
「えっと、もしかして、わたしたち……?」
ひとつになってしまったのか、とおそるおそる問う。目を丸くした彼から必死で目をそらさずにいると、
「ふっ」
息をもらすように笑って、加地さんは身を起こした。めくれあがる布団をかき寄せ、わたしも上体を少しあげた。すると、それが彼の素肌をすべりおちて、目のやり場に困ることに。
手の内で布団に何本もしわが入った。背中を冷房の冷たい風がさわりと撫でていく。
「意識のない人間に手を出すほど飢えてるつもりないよ」
……ということは、いたしていないと。
ほっとしたような惜しいような、複雑な心境になりつつ息を吐き出した。
「覚えてる? 昨日ふたりで飲みに行ったんだよ」
そういえば、そうだった。ようやく意識や記憶がはっきりしてくる。
確か、加地さんがご飯に誘ってくれたんだ。わたしがまだ彼を嫌いだった頃、真由や明衣ちゃん、他の人を誘う姿は何度も見かけてきたけど、わたしには1度だってなかった。
それなのになんの心変わりか、昨日は声をかけてくれて。わたしは嬉しくて「行きます!」と応えたんだ。
そしてお酒を飲んで、佐野さんとの話を聞いたあと自分の話をして────。
さーっと一気に顔が青ざめていく。
わ、わたしってばなんてことを。途中で記憶は途切れているし、完全にやらかしている。なにが楽しくて、好きな人の前でだらしない姿を見せることになっているの。
「ご迷惑をおかけしました……」
顔を隠して頭をさげると、彼がいえいえと応える。
「しわになると思ったからとはいえ、服脱がしちゃってごめんね」
「っ!」
も、もういやだ! 羞恥心で人は死ぬことができるよ!
完全に頭をあげられなくなってしまい、髪がさらりとおちる。そっか、服を脱がしてくれたときに髪もほどかれていたんだ。
必死で意識をそらしていたのに、彼が目の前をすべりおちたそれに手を伸ばす。つまむようにそっと触れて、今度はすくいあげて指に絡める。毛先にまで神経が通ったかのようにびりびりと痺れてしまう。
はやく服を着てしまいたいと思いつつも、動くどころか口に出すことすらできない。