尽くしたいと思うのは、
ふぅ、と息を吐き出して再び箸を手に取る。切り替えなきゃなぁと思ったところで、頭に感じる重み。
無理やり振り返ると、そこには、
「なになに、水瀬ちゃんまた今日も元気に重い女してるの?」
「おい、加地」
そこには、わたしより4つ年上の営業部の先輩方。面倒なエース、加地 隼人(かじ はやと)さんと硬派で真面目な浅田 恭介(あさだ きょうすけ)さんがいた。
わたしの頭には、加地さんが手を乗せている。そのせいでわずかに重たくなったんだ。
むっと顔をしかめて、加地さんを見あげる。
「加地さん重たいです」
「え? 水瀬ちゃんが?」
「加地さんが、です!」
もう! とわたしが怒っていると、浅田さんが彼の手をつかみ、おろしてくれる。
この間もずっと黙ったままで、とても寡黙なんだけど、深い優しさを感じた。ぼろぼろに傷ついた心にしみます。
「浅田さん、ありがとうございます」
「いや、いい。大丈夫か?」
「はい!」
浅田さんは、わたしが今まで出会った男性で1番誠実な人。営業らしい短髪の黒髪で、少し目つきは悪いせいで勘違いされることもあるけど、ただ不器用なだけ。
部署の違うわたしたちを構ってくれる、素敵な先輩なんだ。
隣いい? なんて訊きながら、返事をする前に真由と同じうどんを手にした加地さんが彼女の隣に座る。
まったく、とため息を吐いた浅田さんは諦めたようにわたしの隣をいいかと確認してくれる。
加地さんは座っちゃったし、相手は浅田さんだ。もちろんどうぞと返した。
シャケの塩焼きにひじきに……と定番の和食がつめられたコンビニ弁当がわたしのものの横に並ぶ。
ふたりとも人気のある人だから、周りの視線がわたしたちに向けられていることが肌で感じられて自然と背筋が伸びた。