尽くしたいと思うのは、




「どうしてそこまで……」

「そんなの、加地さんのことが好きだからに決まってるじゃないですか」



あまりにも自然に、ぽろりと口から本音がこぼれおちる。それが恥ずかしくて目元を赤く染めるも、うそじゃない。



「好きです、加地さん。
どんなあなたでも、大好きです」



重いと言われるのは伊達じゃない。誰よりも加地さんを深く愛する自信がある。

だからもうこわがらないでください。軽くても、重くても、加地さんは加地さんだから。とても素敵なことに変わりないから。



加地さんの手がわたしの手をすり抜けていく。そしてそのまますぐわたしの肩に、背中に、腕が回る。

ぎゅっと強く抱き寄せられた。

ぬくもりが全身で伝えられるようで、どきどきして言葉が見つからない。



「俺なんかに捕まって、ばかだなぁ」

「捕まってとか、あの、」

「もらうよ」

「……え?」



遮られた言葉に内心首を傾げる。その意味は一体どういうことなんだろう。

続きを促すようにかすかに頭をあげる。彼に擦り寄るかのようになってしまったことが気にかかるけど、それよりも彼の話を聞きたい。



「水瀬ちゃんの心、全部ちょうだい」



耳に直接流しこまれる声は囁くようで、響きがとても甘い。

優しいトーンにわたしは息を呑んだあと、こくりと頷く。互いの髪が頬をくすぐった。



「その代わり、水瀬ちゃんには俺をあげる。
もう他の女の子なんていらないから、身体も心もあげるから。だから、俺を君だけで、君を俺だけでいっぱいにしてもいい?」

「っ、」



わざわざ訊かなくたって、そんなのいいに決まってる。わたしにとって、それ以上に幸せなことなんてない。

わたしがあなたを幸せにしたかったのに、わたしをこんなに幸せにするなんて。なんてずるい人なんだろう。






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