紡ぎ歌
教室に入れば、後から付いてくるななせが楽しそうに騒ぎ出す。
「やだー、何?告白かなぁ。まだ入学して1週間なのに!早いね〜!」
「いや、そんなんじゃないよ」
そう言って、小さく伸びをした。
大体、突然呼び出されて告白なんて、迷惑極まりない。
仮に告白だったとしても、中身も見ようとしない人とは絶対に付き合えないし
「えー、でも言い切れないでしょ??あの人、名前はなんて言うの?」
ななせのその言葉に、思わずハッとする。
「名前、聞いてない」
「はあ〜?」
馬鹿じゃないの?
と言うななせの声が今にも聞こえてきそうで、少し笑ってしまう。
「何わらってんのよ〜、笑いごとじゃないわよ!」
そう言ってるななせも、しっかり笑っていた。
「ごめんごめん。」
「全く。少し無愛想だけど悪い人では無さそうだし、大丈夫だと思うけど2人きりは気をつけてよ、」
「ありがとう、気をつけるよ。」
ななせの有難いお言葉を胸に、私はもう一度席に着いた。
暫くすると朝のSHRが始まり、担任の先生が何か話している。
(部活動の入部届や入局届は、来週の金曜日までに提出すること)
ぼーっとしていた頭の中で捉えられたのはこの言葉だけだった。
中学生の頃は陸上部に入っていて、中・長距離をメインに活動していたけど、高校に入ってまでやろうとは思わないし、かといってどこにも入部しなかったら、それはそれで暇そうだな。
考えるのも面倒になり窓を見ると、大きなカラスが一羽、横切って行った。