消えて失くなれ、こんな心



七草とは違う高校に進んだ。七草は隣町の高校に進学し、柊は地元の高校に進学した。柊の選んだ学校もまた、七草と同じように進学校だった。


これでようやく、強がらなくて済む。けれどもやはり、柊は仮面をはずすことができなかった。周りの人間全てから認められたくて、愛されていたくて、誰にでも笑顔を振りまいた。誰からも嫌われないように、いじめのリーダーだったことを隠すように、あの言葉を放たれないように、とにかく優等生を演じた。なんてわがままで臆病な優等生なんだろう。


高校生になってからは、一度も七草の姿を見ていない。結局は、男の子なのか女の子なのかわからないままだった。七草とは、いじめる立場といじめられる立場という形で関わっていたけれど、七草の着ていたものが学ランだったのか、それともセーラー服だったのか、それさえも思い出せないでいる。そして、悪いことをしたと思うこともないままだった。



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