君が消えた日。
「ねえ、奏楽には何か心当たりが無い?」

葵が真剣な声で聞く。

「いや・・・無い。だって人と関わりが無いし・・・でも・・・」

「でも?」

「いや、何でもない。」

(“殺人犯”という言葉には何か心当たりがある気がする・・・)



「じゃあ、私が聞き込みに行ってくるよ!」

「いいの?藍華。」

「うん!私二人と違って頭良くないからこういう事しか出来ないし!じゃあ行ってくるね♪」

ニッと笑うと藍華は音楽室を走って出ていった。

「・・・今、昼休みか…お腹減ったな…」

「購買行く?あ~、でも今行くとヤバイよね。あの騒動があるし」

「うん・・・」

「ねえ、奏楽…聞いてくれる?」

「何を?」

「ウチの家庭の話」

「いいけど・・・何かあるの?」

「ウチのお父さんね、飲酒運転して歩道に突っ込んで・・・子供を一人、殺しちゃったんだよ…」

「え・・・?」

「今も刑務所の中。ウチの家はもうその町じゃ住めなくなって…引っ越してきたの」


葵の重すぎる過去に私は何も言えなかった。
葵は、幼い頃からそんな重い記憶を背負っていたんだ。

「だから奏楽が殺人犯って書いてあった時、少し嬉しかったんだ…。本当じゃないって分かってたけど、この人なら私の事分かってくれるかもって…」

「葵・・・」

「ごめん、初めて話したばっかりなのにこんな話して・・・」

「そんな・・・話してくれて、ありがとう。何かね、思い出せそうなんだ。」

「思い出せそう?」

「うん・・・何か、すっごく大切な事、忘れている気がするんだ」

「へぇ・・・それって・・・」

「大変!!大変だよ!!」

バタバタバタと藍華が慌ただしく入って来た。

「藍華?どうしたの?」

「き、来て・・・!!早く!!」
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