君が消えた日。
「ねえ、桐島(キリシマ)さんて下の名前なんていうの?」

「・・・」

「えーと・・・奏楽(ソラ)?わあ、可愛い!」

私が無視したため、バッグについている名札を見たらしい。

「じゃあさ、奏楽はなんか好きな歌手とかいないの?」

おいおい、いきなり呼び捨てかよ。本当に、この子は何を考えてるのか分からない。

「・・・」

「・・・奏楽ってさ、人苦手だったりとかする?」

少しだけ、驚いた。今までこのことを人に聞かれたことがなかったから。
普通人間って、こういう面倒くさい事を聞いたりとかしない人ばかりだと思っていた。

「・・・まあ、得意ではないよね。どう見ても。」

「あ!!喋った!!やったあ!!」

「!?」

「あ・・・ごめん失礼な事言って・・・初めて喋ってくれて・・・嬉しかったから。」

・・・本当に、変わった子。でも、この子だったら・・・

「奏楽?・・・あっ!!」

いきなり大声を上げたのでビックリして藍華の方をみると・・・

「あー・・・ストラップのひも切れて転がってちゃった・・・道路の真ん中に落ちてるの、ストラップかも!ちょっととってくるわ!」

そういって駆け出す藍華。


その姿が・・・何かと重なる。

何だ・・・こんなシーン・・・他にいつ・・・?
駄目・・・思い出せない・・・

でも、走る藍華の後ろ姿が、小さな少女と重なる。
私が・・・幼いころに見た記憶?
何だっけ・・・

でも、感じた。藍華がこのままじゃ危ない気がする。
助けなきゃって。
< 2 / 12 >

この作品をシェア

pagetop