君が消えた日。
事件
「奏楽!おっはよー!!」

「おはよ」

向こうから走ってきた藍華と肩を並べて、学校へと向かう。

「本当、良かった!元気になってくれて!」

藍華が大きな目を細めてニコッと笑った。

「別に大した怪我じゃなかったしね。」

私もできるたけ笑顔を作って答える。
笑顔ってなかなか難しい・・・

「・・・本当に優しいよね。奏楽って。」

「・・・優しい?」
初めて言われた。“優しい”なんて。

母にも、先生にも、クラスメイトにも、誰にも認められたことなんて、褒められたことなんてなかった。

ずっとずっと、私だけがこの世界からいないような気がしていた。


ずっと・・・昔から・・・


「奏楽?」

「! ・・・なんでもないよ。急ごう。」


もっと・・・仲良くなれたらいいな・・・藍華と。

今まで、他人が怖かった。これからもそれは変わらないと思う。
他人も暗い私の事を怖がっていた。それも変わらないだろう。

でも、藍華はなんだか他の人とは違う・・・そんな気がしたから。
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