ルームシェア
「ねぇ、朝、私が部屋に着替えに行った時、宝生さんと何かあったの?」
朝食もなんとか済み、今日は結と一緒に部屋を出た。いつもならもうちょっと遅い時間に出勤するらしいけど、今日はたまたま早出らしい。
「あー、うん。そういえば、尚ちゃんに口説かれてなかった?」
「えっ?」
「凌ちゃんが、何かそんな事……」
『口説く』ですか?
パジャマ姿は注意されたけど……それの事かな?
だけどそれが『口説く』に値するか分からない私は、結の方を向き、ことりと小首をかしげた。
いやいや、あれは違うでしょう!?
ただ単に注意しただけだよ。
雨上がりの空は、少し水気を帯びていて、ひんやりとした風が頬を撫でてゆく。
新しい朝。
今日から全て始まる朝なのに、きっと私の不注意で朝の場面はあったのだと、なんとなく思った。