ルームシェア
考え事なんてしていたから、知らず知らずに凌介さんの顔をガン見してしまったみたいだ。それも無意識に。それにこのちょっと近い距離感はなんなんだろ?
ともかく、凌介さんに声を掛けられるまでそれに気づけなかったなんて、なんか恥ずかしい。
そんな私は慌てて目線を逸らしキッチンへ戻る。きっと顔は真っ赤だし何だが妙に心臓もバクバクいってる。
やっぱりイケメンの部類は私には手に負えない。ぐつぐつと煮たつ鍋の中身をかき混ぜながらそう思った。
◇◇◇
たまたまその日は残業で遅くなり、社を出た時点で辺りは闇に包まれていた。
いつもならもう少し早い時間で、人通りもそれなりにある筈なのに、少し時間がずれただけて辺りは閑散としていた。でも人込みとかあまり好きじゃあない私にとって、これはこれで楽かな。
どこもかしこもそんな感じでいつもよりひっそりしている。
でもだから、彼を見つけてしまったのかもしれない。