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「あれ、棗ちゃん今帰り?」
改札を抜け、人も疎らなホームで次の電車を待っていると背後から声を掛けられた。
「あ、宝生さん」
声のした方に振り向くと、スーツ姿の宝生さんがゆっくりと私の隣に近付いて来た。
「棗ちゃんもこの駅?」
「はい」
自然と彼は私の隣に並ぶ。私より頭一つ分ぐらい背の高い宝生さん。そんな彼を私は見上げる。
その姿は今日の朝だって見た筈なのに、どうしてだろ?何だか違う雰囲気が漂ってる。仕事上がりだからだろうか??
「棗ちゃんの職場もこの辺りなんだ。なんか奇遇だね」
「……」
真っ直ぐ前を見て話す宝生さん。その姿は凛としていてやっぱりいつもとは違う。
だからだろうか?なんだか急に心臓がバクバクしてきた。それに顔だって確実に真っ赤かも。
一緒に暮らしてると言うのにどうして?なんで急にこんな事になってしまってるんだろ?
「ん、棗ちゃん大丈夫?どうかした?」
私が無言だったのが気になったのか、真っ直ぐ前を見ていた彼が突然私に目線を向ける。私はそれを交わすようにさっと俯いた。
でもこれって、なんか感じ悪いかな?