ルームシェア
恋人同士なら……ふたりだけのルームシェアならあまり気にならない事柄かもしれないけど、複数だとそう言う事も気にしないといけないんだ。
確かに、知り合いや友達の情事の事情なんて知りたくない。
あんまり深く考えないでこの共同生活を始めてしまったけど、やっぱり他人同士が一緒に暮らすのって簡単な事じゃあないのかもしれない。
そうまじまじ考えていると、宝生さんがぼそっと呟いた。
「い、今までに、何回かあったんだよ。ドア、開けたら結の喘ぎ声みたいなのが聞こえてきたとか……
本当ごめん、奴らにはちゃんと注意しとくから」
「………」
何も宝生さんが悪い訳じゃあないのに、律儀に謝ってくるから、なんて口にしていいのか私の方が迷ってしまう。
それに、さっきからずーっと宝生さんに手は握られたまま、これもどうしていいのか分からない。無理やり振りほどく訳にもいかないし。
なんだか微妙な空気を作り出したまま私達は歩き続けた。
そして、駅前のファミレスの前で彼は立ち止まった。
「ここでいい?」