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や、ヤバい。無意識にガン見していた。
私は慌てて目線をずらした。
まさか「貴方の顔が綺麗過ぎて見惚れてました」なんて真っ正面から言えないし、他の言い訳も見つからない。だから、ただ黙り込むしかない。
「今日の棗ちゃんは、おかしいね」と宝生さんはそう言うと、そそくさと食べ終え、お皿を流しに置きに行った。
私は宝生さんのその台詞をぼんやりと聞きながら、その言葉の意味をゆっくりと考えた。
今日の私はおかしいかな?いつもと同じだと思うけど。
◇◇◇
食事を終え自分の部屋に戻ると、今日渡された楢崎くんからの紙袋がなぜか目についた。
だけど、すぐそこから視線をずらした。
まだ胸の中に残る気持ちがまた甦るのが怖くって、私は思い出さないように目を閉じた。
だけどこの紙袋の中身が発端で、大騒動になるなんてその時の私は思いもよらなかった。