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何となく今の自分のモヤモヤした気持ちを振り切りたくて、宝生さんみたく缶ビールを開けてごくりと一口口に流し込む。
あまりの苦さに顔を歪めるも、隣の彼はきっと気付いていない。それをいい事に私は宝生さんをちらりと覗き見た。
「ビール、嫌い?」
「え…」
あまりにも唐突な質問に私はびっくりし言葉をなくした。もしかして、気付かれてたのかな?
それっきり何も言わず固まったままでいると、宝生さんの手が私の方へすっと伸びてくる。その手は器用に私の手から缶を奪い去っていった。
そしてそれをごくごくと飲み干す。私はただその一連の流れを見守る事しか出来なかった。
「じゃあ、眠れる魔法掛けてあげる」
ビールを飲み干した宝生さんはふと私に視線を投げ掛ける。それと同時に、妙な台詞を呟いた。
え?魔法??宝生さんってそんなキャラだっけ?
そんな呆気に捕られる私を余所に、彼は妖艶な笑みを浮かべた顔がすっと近づいてくる。
「目ぐらい閉じてよっ」
「えっ?」
「キスするに、目、閉じないの?」