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キ、キス!?何で今?どうして……
そう思ってる間にも宝生さんの顔はどんどんと私に近付いて来る。避けたくても、なぜか身体が動かないし、頭の中は軽くパニック状態だし。
とにかく、どうにか阻止しなきゃと思うのに、今の私にはどうにも出来ない。だから結局言われるがままギュッっと固く目を閉じた。
優しく触れる彼の唇と微かに香るお酒の匂いと、私とは違う体温がそこに触れて、私の頭の中は完全に停止状態。
でも、嫌じゃあなかった。だから無理やり彼を突き放したりしなかったのかもしれない。けど……
すぐに離れると思った唇は、思った以上にそこから動かない。
それよりも、宝生さんは何を考えているのだろ?急にキスなんて、それも顔色一つ変えずに。
どうしょもなく息苦しくなって逃げようと後ずさっても、いつの間にかしっかりと彼の手が後ろに回っていて私は身動き取れない。
「…ん」声にならない声を上げると、ようやく彼が離れていった。けどすぐ、彼の胸の中に再び捕らえられ、また身動き取れない。
「いい匂い…」