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「そう言えば、結と凌は?」


水を飲んで少し落ち着いたのか、宝生さんが声を掛けてきた。私は本を読む手を休め彼をみつめた。


「仕事ですよ、土曜日ですけど」


「あ、そっか、今日は土曜日か」


弱々しい声と共に再びソファーにうずくまる彼。私はこのまんま会話をなぜか終わらせたくなくて、再び話し掛けてた。


「宝生さんは、お休みですか?」


くだらない質問だと思う。
けど、多分土日は休みだと思うけどたまに休日出勤もあるみたいだし。


「うん、休み……」


短い気だるげな声が帰ってきた。辛いのかな?
それにしても、こんな宝生さんの姿は初めてだ。
いつもどこか飄々としている彼が、こんな弱った姿を私の前に曝すなんて。


「あのー、昨日のアレは……なんですか?」


「アレ?」


私はテーブルに頬づえついて、彼の姿をじっと見ていた。
そしたら何となく昨日の事を聞いてみたくなった。今の宝生さんならきっといつもみたいに上手く交わせないと思う。
だから敢えて聞いてみた。


が、辛そうに頭に手を当てているだけの宝生さん。
もしかして、昨日の事は、覚えてないの?


「あっ、いいです。何でもないです」


やっぱり、彼が覚えていないのなら昨日の事は何の意味もない。
返って昨日の事を思い出し私だけが意識してる。宝生さんが覚えてないなら、それはそれでいいじゃあないか。私も忘れたふりをすればいいのだから。


なんだかとってもいたたまれなくなって、話を変えようと口を開く。が、彼の思ってもない台詞に遮られた。



「……覚えてるよ」


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