君が好きになるまで、好きでいていいですか?



「………沢村さん?」





慧斗の会社のある所とは違う方向から名前を呼ばれ、顔を向けると…………


「あ…………後藤さん?」



夜だけど、この前見た時と同じで見事なイケメンっぷりだ

その背の高いスーツのイケメンが近づいて来た

「名前、覚えてくれたんだ」

そりゃあね、あの名刺貰っちゃったし


「………………お仕事ですか?」

こんな所で出会えるもんなんだと、感心しちゃうけど

「そう、この近くの取引先にね。もう会社に戻るとこだったけど、沢村さんは?」

近づいてきた後藤の目の前で桜の花びらがチラついて、ふいに上を見上げた


「ああっ……綺麗だよねここの桜、もうこの一本しか咲いてないけど………」


「ここ、よく通るんですか?」


「たまにね、時間潰し用のカフェなんかも多いからね。」

「へぇ………………あ」


さして、興味なく後藤へ視線を向けると、その後ろの角度から調度ビルの窓際に慧斗と和音が話をしている姿があった。

思わず目を逸らし、視線を桜に移した


「んっ?」


「いえ…………なんかこの桜、ずっと見上げてると、その上にある夜空に全部綺麗なのが吸い込まれてくみたいで、ちょっと恐いなって」

まるで段々と黒くなっていく、私の気持ちみたい…………


「そう?」

背の高い位置からさらにその上の桜の花を見上げながら首を傾げる後藤

「逆に………真っ暗だから桜が光って明るく見えるけどなぁ、俺は」


……………そうゆう考えかぁ


「案外とポジティブなんだ…………」


「ん?」
< 10 / 333 >

この作品をシェア

pagetop