君が好きになるまで、好きでいていいですか?

万由の言う事を遮って近づいて来た後藤から、身体を離すように後退ると、棚へ追い詰められた

近く息の掛かる距離感、視線を離して俯いた

「合コン行って、彼氏と同じ様に浮気でもするの? 適当な男選んで………」

浮気って……………


「……だから課長には関係な………ぇっ」

スッと近づいてきた後藤の両手が万由の頬にそっと触れてきた
 

「……………っ!!!」


両頬をしっかり押さえられた大きな手の中で、後藤の角度をつけた唇が堕ちてきた


その感覚は、やっぱり前の夢の中と同じ
シトラスの香りに微かな煙草の味…………



暗い倉庫室に、壁の高い位置にある小窓

その窓の明かりから埃の筋が通るだけの、後は暗く鎮まりかえった部屋の中

唇が重なる音と、そこから逃げようと動く服の擦れる音だけが響く


「んっ………ぁっ、や…………」

顔を叛けて、頬にある後藤の手を退けようとしてもまた、彼の唇が追いかけてくる

胸を押しても離れてくれない


「んんっ………」

ゆっくりと唇だけ離れると、その距離は後藤の息が万由の唇にかかる


「彼氏を困らせたいなら、俺を使えばいいだろ………なぁ、合コンなんか行くより」


「そっ……んなっ…………ん」

また唇を押し付けられると、こじ開けられた口に舌を巻き込まれ、口づけが吸われるように激しくなっていく

そのまま離れない唇が頬に、ゆっくり首元まで降りてくる


「やぁっ………………」

抵抗して、後藤の胸を押していた万由の手の力が抜けて
その瞳から涙が溢れ落ちる

万由の引き付ける喉元から、後藤の唇が離れる

「ううっ………ひぃっく…………」

万由は両手で、ぽろぽろと流れる涙顔を覆ったまま、後藤が手を離したその場に崩れ堕ちた


「………慧ちゃん、慧ちゃん………」


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