君が好きになるまで、好きでいていいですか?

「ああ、そうか。うん、大丈夫だった。軽い捻挫で、もう直ったよ」

『もう直ったよ』って、私と会わない間でも、和音さんには会えてたって事よね。

まあ、会社が同じなんだから当たり前なんだけど…………


「そう………なんだ……」

良かったね、とも言いたくない

そんな万由の複雑そうな表情に慧斗が溜め息をつく



「万由、いろいろ嫌な思いさせてごめん」


「…………」


「………俺、今だって万由と付き合っていきたいと思ってるよ。ずっと好きだったし、これからだって………」

慧ちゃんの言う言葉を一言だって聞き逃すつもりはない。
そう思って、黙って彼を見据える


「和音ともちゃんと別れたんだ。万由と付き合うって決めた時、あいつだって納得してたんだ、その時は」

その時は?

少し視線を逸らしアイスコーヒーを飲む慧斗


「じゃあ…………なんでまだ慧ちゃんがあの人をかまうの?別れたんならほっとけばいいのに、捻挫して夜中に付きっりって…………
あの人の家族とか呼んだら………」


「あいつに、家族はいないから」


「でも、じゃあ………」

でも、やっぱり慧ちゃんじゃなくて他の人でもいいのに


「和音とはただ気が合うから一緒にいるだけだよ。俺と付き合ってるのは万由だけなんだから」


「……………」

ちょっと待って…………なにか、おかしい……



「どうして部屋にも入れるの?」

「………え?」

冷蔵庫の中身だけじゃない。ちょっとづつ細かく気のついたように整頓された感じ、小さい頃から一緒だったから分かる…………

あれは、慧ちゃんが片付けたものじゃない

確かにまだ付き合って間もないし、部屋だって何回も入った訳じゃないけど、初めてから2回目、3回目微妙に手を加えられた部屋
まるで私に主張してるように
きっとズボラな慧ちゃんには分からない


ずっとずっと自分に言い聞かせなきゃ慧ちゃんの彼女だって自覚がもてない…………
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