君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「……………これじゃあ、慧ちゃんは慧ちゃんのおじさんと一緒じゃない…………」


そう言葉に出して、ハッと慧斗を見直した


「……………」

顔を歪ませて万由を見下ろす慧斗


「ごめん…………慧ちゃん、あの……そん……」
そんな事言うつもりじゃなかった………


「本当だな…………本当にその通りかもな」



おばさんとの夫婦破綻状態でも、他に浮気して子供まで出来てたのに、二重生活をずっと続けていた慧ちゃんの父親

その関係を終わらすようにおばさんに説得したのは私の母で、そうしなかったらその
ままだったって…………


私は、慧ちゃんにとってどっち側の方なのか…………考えたくない


暫く二人の間に沈黙が流れた


「………………」

チリンと微かな音をさせて鞄を探り
徐に中から万由が取り出した慧斗の合鍵

『KEITO』と書かれたプレートのキーホルダーを


「これ………慧ちゃんに返す。」

「万由………」

差し出しても受け取らない慧斗の手のひらを引っ張り出して無理やりその中に押し込んだ

「……………これ、持ってるとヤバイから。」

はじめに着いていたあの人の慧ちゃんとお揃いだったミニーのストラップは、とっくに捨ててしまった


「ヤバイ?」

「犯罪犯しそう。不法侵入………器物破損」

慧斗が頭を傾げて、何をと少しははっと引いた

「何度も考えたの。いろいろ頭にきて、食器を割ってやろうとか、ベッドに冷蔵庫のミネラルウォーターぶちまけて水浸しにしようかとか…………トイレの汚物入れシンクの三角コーナーに置いておいたらどう思うかとか」

そう言って横顔を見せたまま自嘲する万由

目を丸くして、慧斗の頬がピクリと上がる


どうしようも出来ない事は分かってた


慧ちゃんが口では私と一緒と言いながら、行動や気持ちは和音さん中心だって………

このまま、離れないでずっと上手くやっていく事はできるけど、いずれ私の身動きがとれなくなっていくと思う


だから…………


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